カテゴリー「その他のバグパイプ」の記事

2012年1月22日 (日)

これは珍しい!ドローン付のゲムスホルン

 今回はチューニングに関する記事はお休みにして、ゲムスホルンのトピックをご紹介します。

 ご存知の方もおられるかと思いますが、ゲムスホルンというのは、簡単に言えば角に吹き口を取り付けた楽器で、リコーダーのようなラビウム構造を持っています。第二オクターブは出ないそうですが、柔らかな音はリコーダー同様に色々な楽器との合奏が楽しめますし、ゲムスホルンだけでソプラノ・アルト・テナー・バスをそろえたアンサンブルもあります。また、材料となる角は大きさや形も様々な天然素材ですので、音孔の位置を記した雛形などはなく、製作にあたっては個々の角に合わせて音孔をあけていくそうです。

 さて、私の知人でゲムスホルンを作っているAlois Bibergerという男がおりますが、彼がこれにドローンをつけてしまいました。バグパイプではありませんが、面白いのでご紹介します。(下写真)

Cimg3630_3

 こちらから見て左側が「チャンター」で、右が「ドローン」です。写真では良く見えませんが、ドローンにもいくつか音孔があって、これに適宜栓をすることでドローンの音を選べるようになっているというスグレモノです。

 また、YouTubeに短い動画をアップしましたので、ご覧下さい(うっかりデジカメを縦にして撮影してしまったので、画像が横倒しになっております。悪しからず・・・)

http://youtu.be/yfM6oo9yjdM

 さて、気になる価格ですが、ドローン付きは500ユーロ程度、とのことです(Aloisによると、「高い」と言われることもあるそうですが、大量生産ではない手作りの一品モノで、作業に要する時間諸々をドイツの物価や賃金レベルに照らし合わせて考えてみれば、極めて適正な価格だと思います)。Aloisはこのほかにも、普通の(ドローン無し)ゲムスホルンのほか、珍しい弦楽器も作っていますので、一度ホームページをご覧下さい。

http://www.klangbaeckerei.de/

 Aloisの楽器に興味があるものの、ドイツ語でのやり取りが難しいという方は、当方で彼に取り次ぎますので、お問い合わせなどがありましたら、私宛にご遠慮なくメールでご連絡下さい。

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2012/01/20/10568

バグパイプ工房 そのだ

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2011年7月 4日 (月)

「アライグマ丸ごと(?)」バグパイプに関する追加情報。実はアライグマではなく・・・?

 先月ご紹介したエストニアのアライグマ丸ごと(?)バグパイプ「トルピル」について、その後色々調べてみたところ、いくつかの情報が得られました。

 まず、アライグマと思っていたバッグ部分の動物は、実はアライグマではないのでは?という疑いが出てきました。というのも、よくよく写真を見てみると、アライグマにしては尻尾の縞模様が不明瞭だし、顔もラスカルとはちょっと違う。そこで今一度アライグマの分布を調べてみたところ、アライグマは元々北米産で、欧州にはいなかったことがわかりました。最近でこそペットとして持ち込まれたアライグマが欧州でも野生化し、ベルリンあたりのアライグマは、神戸市灘区に出没して主婦を困らせるイノシシと同様の所業に及んでいるとのこと。ことこれに至ってアライグマ専用の罠も売られているため、てっきり欧州に元々棲息している動物だと思っていたのですが、これは間違いでした。エストニアでも頻繁にみかける動物ではないそうです。では、丸ごとバッグにされてしまったこの哀れな動物はいったい何なのでしょうか。このタイプのバグパイプを写真入りで解説した資料もあるのですが、それらには「キツネ」「山猫」と書いてあります。しかし、これ、どう見てもキツネやネコではないでしょう。

 というわけで図鑑やネットで色々調べてみた結果、恐らくこれは、我々日本人が愛する「タヌキ」ではないか、との結論に至りました。タヌキも極東アジア原産で、元々エストニアにいる動物ではないのですが、毛皮を取る目的で旧ソ連に移入された個体が繁殖し、現在では欧州でも生息域が拡大しているそうです。楽器の写真と日本のタヌキの写真を比べてみたところ、確かにアライグマよりはよほどタヌキに見えます。しかし外来種の動物であるため、多くの欧州言語には「タヌキ」をあらわす単語が無く、その結果「キツネ」や「山猫」と表現されてしまったのでしょう。しかしながら、幸いドイツ語にはピンポイントで「タヌキ」を意味する「Marderhund」(直訳すると「イタチ犬」)という単語があり、私の知人で実際にこの楽器を見たオーストリア人も「Marderhund」と称しております。ちなみにWikipediaドイツ語版で「Marderhund」を調べると、ずばり「タヌキ」に関する解説がなされており、「風もないのに・・・・」で知られる信楽焼のタヌキの写真も紹介されているほか、宮崎アニメの「平成タヌキ合戦ぽんぽこ」でも「Marderhund」と称されています。

 もっとも、トルピルには必ずタヌキだかアライグマだかを丸ごと使わなければならないという縛りがあるわけでは全然なくて、上記オーストリアの知人によれば、「ウサギ丸ごと」というのもあるそうですし、普及しているトルピルのバッグの多くはごく普通の皮バッグです。まあ、バグパイプの多様性、言い換えれば「何でもあり」、を示す一例でしょう。とはいえ、極寒のシベリアを経てはるかヨーロッパまで連れてこられた挙句、バグパイプにされてしまったタヌキの心中、さぞかし無念であろうと察します。

 さて、ついでと言っては何ですが、トルピルの楽器としての構造にも触れておきましょう。チャンターはシングルリードで鳴らすストレートボアタイプで、主流はG管、主音Gの指孔は右手中指に位置します。オープン運指の運指表もありますが、ハーフクローズド等他の運指で演奏している例もありますし、他の東欧系バグパイプの多くがクローズドであることから、クローズド運指の可能性を排除する理由はないでしょう。ドローンの数は一本から三本と様々。ちなみに、トルピル(Torupill)はエストニア語で一般的に「バグパイプ」を指す言葉らしく、これで検索をかけるとハイランドパイプスもヒットします。スウェーディッシュ・バグパイプ「セックピーパ」もそうで、「Säckpipa」検索ではスウェーデンのハイランドパイプスバンドが検索結果にあがって来ます。

 トルピルは、見た目は全然違いますが、楽器としての構造的はボックやスウェーディッシュ・バグパイプと酷似しており、技術的には十分製作が可能でなので、文化的背景や曲などを勉強しながら作ってみたいと思っています。何といってもトルピル(Torupill)には私の名前(Toru・・・パイプという意味)が含まれていることですし。

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2011/06/08/5793

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2011年6月 5日 (日)

これは珍しい!エストニアの(アライグマまるごと)バグパイプ

 前回に引き続き、動物さんバグパイプです。まずは写真をご覧下さい。

Cimg1782 Cimg1783

 これは、エストニアのバグパイプ(Torupill)の一種です。残念ながらこの楽器に関しては、私自身製作しておらず知識も持っていないので、詳細な解説はできませんが、木管部分の構造や音色は典型的な東欧型バグパイプのものです。この写真はオーストリアで撮影したものですが、スペインの楽器博物館でも同じ楽器を見たことがあります。たまたま写真に写っている楽器にアライグマ全部を使っているというのではなく、こうした形で作る伝統があるようです。エストニアにはバッグに普通の皮を使ったTorupillもありますが、その場合でもチャンターとドローンはアライグマパイプの場合と同様の位置関係で配置されています。

 山羊なら家畜として肉をとったあとの毛皮を使っているだろうことは想像できますが、この楽器の場合、アライグマがどのような経緯を辿ってバグパイプとなるに至ったかについては、残念ながら存じておりません(わざわざバグパイプにするためだけに屠殺されているのではないと思いますが)。

 バグパイプというのはバイオマテリアル製品なんだなあとつくづく思います。

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2011/06/02/4850

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  • 2.2 セックピーパ(スウェーディッシュ・バグパイプ):ドローン
    当工房で製作しているバグパイプの一部をご紹介いたします。
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