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2016年10月 4日 (火)

バグパイプを清潔に保つために

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少し前になりますが、8月に英国の医学ジャーナルがインターネットに掲載した記事をご記憶の方も多いでしょう。肺疾患で亡くなった英国人男性パイパーの症例報告ですが、バグパイプ(ハイランドパイプス)内部で繁殖した雑菌・カビを吸入したことが疾患を悪化させた疑いがある、と指摘されています。さらにこの報告では、バグパイプに限らず、同様の疾患は他の管楽器奏者においても発生しうるとして、管楽器奏者に広く注意を促していました。

バグパイプ奏者に関していえば、このような症例が報告されたのは世界初だそうで(他の管楽器奏者では過去に似た症例があったとのこと)、現在世界に何十万といるであろうバグパイプ奏者の殆どが元気にバグパイプを演奏している現状を考えれば、極めて稀なケースなのでしょうが、こうした症例が報告されたことを踏まえ、楽器を清潔に保つことの重要性を改めて認識しておくのは有意義なことと思われます。

そこで今回は、主に衛生面に焦点を当て、口吹き式バグパイプを清潔に保つために出来ることを、いくつかご紹介いたします。経験豊富なパイパーの方、或いは他の管楽器を演奏される方がご覧になれば、全て当たり前のことかもしれませんが、初めての管楽器がバグパイプで、且つ独学で習得に励む方の場合、どうしても基本的なメンテナンスについて学ぶ機会が限られてくるので、特にそうした方々にご参考にして頂ければ幸いです。

<歯磨き>

状況が許せば、練習・演奏の前に歯磨きをすることをお勧めします。

 

<演奏後の保管>

演奏後は、ブローパイプ、チャンター、ドローンをバッグから取り外しておきます。特にブローパイプは湿気を多く含んでいるので、必ず外しましょう。この際、ジョイント部分(糸・ヘンプを巻いてある部分)と、ストック内側の湿り気をふき取ります。また、バッグ内の湿った空気は、できるだけ出しておきます。楽器は高音多湿の場所をさけて保管します。

 

<マウスピース>

プラスティックのマウスピース部分は、演奏後に管楽器用のマウスピースクリーナーで消毒します。マウスピース内部は、綿棒を使って汚れを拭き取ると良いでしょう。

 

<ブローパイプ・逆流防止バルブ>

マウスピースから下へ続くブローパイプ木管部分は、管楽器用の清掃棒(スワブ)が差し込めるのなら、それで内部をきれいにします。内径が狭くて差し込めるスワブが見つからない場合、下から綿棒などで水滴をぬぐい、できるだけ湿気が残らないようにします。演奏後、逆流防止のバルブには水滴が多くついていたり、湿っていたりするので、これをふき取ります。革製バルブの場合は、時折オリーブオイルを塗ってやります。

 

<リードキャップ>

リードキャップを装着して、チャンターやドローンを保管する場合には、チャンター・ドローンのジョイント部分の湿り気を予めふき取り、リードキャップの汚れやカビの有無をチェックしましょう。プラスティック製のリードキャップなら、マウスピースクリーナーが使えます。木製キャップの場合には、適宜汚れをふき取り、時折オリーブオイル・アーモンドオイルを塗る等のメンテナンスをしましょう。

 

<バッグ>

まず上記の通り、演奏後はバッグからブローパイプ、チャンター、ドローン管を外し、通気性をよくした上で保管します。バッグ自体のメンテナンスは、以下のようにバッグのタイプによって異なります。

 

1)革バッグの場合

シーズニングで気密性を持たせている革バッグは、定期的にシーズニング処理をします。これは、気密性維持に加え、新しいシーズニングを入れることが内部の清掃を兼ねるため、適宜行うことをお勧めします。

一方、当工房では、シーズニングフリーの革バッグも製作しております。このタイプの革バッグでは、シーズニングを入れないため、内部を乾燥した状態に保ちやすいですが、今回上記のような症例報告がなされたのを受け、シーズニングフリー・バッグの内部を手入れするための清掃棒を作ってみました(写真)。

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ご覧の通り、丸棒の先にガーゼや布を取り付けただけのものなので、自分で簡単に製作できます。ストックからバッグの中に差し込んで、内部の湿気や汚れをふき取るために使います。棒のサイズは、直径810ミリ、長さ4045センチ程度がお勧めです。私も自分のハイランドパイプスのシンセティックバッグで試してみましたが、この長さがあれば内部全体を拭くことができます。もちろん長いほうが奥まで届きやすいのですが、長すぎると楽器ケースに入らなかったり、力の加減が難しいという難点があるので、せいぜい50センチ程度までが使いやすいと思います。また、バッグの内部を傷つけないように、紙やすりなどで棒の先端部分の角を取り、丸くしておきましょう。さらに、棒の表面全体に紙やすりをかけ(120番・240番の仕上げで十分です)、その後オリーブオイルなどを塗って乾かしてから使用すれば、棒の保護になります。私は持ちやすいように太目のグリップを作りましたが、これは必ずしも必要ではありません。棒の根元に、バットやラケットのグリップ用テープを巻けばことが足ります。

なお、革バッグでは(シーズニング有・無どちらの場合でも)、演奏後バッグの内部にハッカ油を1~2滴垂らしておくと、ある程度の抗カビ効果が期待できます。但し、演奏中は、ブローパイプを通じて僅かに逆流してくる空気の中にハッカ成分が混じり、これを吸入することがあるので、呼吸器に疾患・アレルギー・過敏性のある方は行わないで下さい。ハッカ油滴下後しばらくは演奏に際して口元にハッカの清涼感が感じられますが、これは人により好き嫌いがありますから、これが気になる方にはお勧めできません。いずれにせよ、自分に合わないと感じたら、使用を避けましょう。また、ハッカ油は短時間で揮発するため、効果は長く持続しません。このため、ハッカ油を使った場合でもこれに頼り切らず、上述の各種メンテナンスはしっかり行いましょう。

 

2)シンセティックバッグ (人工素材バッグ)の場合

シンセティックバッグの某メーカーに確認したところ、伝統的な革バッグに比べるとシンセティックバッグは雑菌が繁殖しにくいので、あまり心配はいらない、とのことです。しかし、気になる場合には、ジッパー付きのバッグなら時折ジッパーを開いて内部を拭くことができますし、ジッパーが無い場合でも上記の清掃棒での手入れが可能です。

以下は、あくまでも参考ですが、どうしても内部を丸洗いしたい場合、上記メーカーから「哺乳瓶の消毒に使うミルトン洗浄液をぬるま湯程度に温め、バッグに注ぎ入れて消毒した後、冷水でこれをよく洗い流し、その後しっかり乾燥させる」という方法をご提案頂きました。但し、ミルトン消毒液は、一部のプラスティックや金属に対して腐食性があるとされますし、基本的に木管の内部を多くの水にさらすことは避けたほうが良いことから、この方法はストックを取り外したうえで行うことが望ましいです。しかし何度もストックを取り外して付け直すと、取り付け部分が弱ってくるので、この方法はどうしても必要と思われる場合にのみ(例えば、汚れがひどいが、新しいバッグを注文して入手する前に演奏の仕事が入ってしまった、など)、あくまでも緊急避難的な手段に留めておくのがよいでしょう。

 

革・人工素材いずれの場合でも、基本的にバッグは消耗品です。空気もれが改善しないといった状況の他、内部の汚れがひどい、変な臭いがし始めた、と感じたら、バッグの交換を考えましょう。また、インターネットオークション等で中古の口吹きバグパイプを購入した場合には、マウスピースやブローパイプをよく手入れした上、バッグの状態もよくチェックしましょう。当工房では、こちらで製作したバグパイプはもとより、他の職人さんが製作したバグパイプについてもバッグ交換サービスを承っておりますので、ご自身で交換が難しい場合にはご相談下さい。

丁寧にお手入れした清潔なバグパイプで演奏を楽しみましょう!

 

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2016/10/04/42971 バグパイプ工房 そのだ

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