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2014年11月30日 (日)

シーズニングによる革バッグのメンテナンス

(1年以上ブログを放置していたことについては何卒ご容赦を...)

ハイランドパイプス奏者の皆さんなら、バグパイプのバッグを気密に保つためのシーズニング処理についてよくご存知のことでしょう。先輩パイパーの方々からやりかたを教わった方も多いことと思います。一方で、演奏人口の少ない、他のバグパイプを独習で学んでおられる方からは、シーズニング処理についてご質問を頂くことも少なくありません。そこで今回は、シーズニングとその方法についてご紹介いたします。

「シーズニング」というのは、あえて日本語で言うと、「バッグを気密に保つためにその内部に使用する目止め剤」ということになります。革製のバッグの場合、微細な毛穴や縫い目などから空気が漏れてしまうので、これを塞ぐために使用するものです。常温ではゲル状のものが多いですが、粘度の高い液状の場合もあります。自分で調合しているメーカーさんもおられますし、自作用のレシピなどもインターネット上で紹介されていますが、既製品をバグパイプ関連のオンラインショップで簡単に入手することができます。日本でもバグパイプ関連商品を取り扱っている業者さんがいくつかありますので、国内での調達も可能でしょう。なお、ハイランドパイプス用に売られているこれらのシーズニングは、その他のバグパイプにも概ね使用可能です。ただし、革のタイプによる相性もあるので、お持ちのバグパイプを製作した職人さんに事前にご相談して下さい。私の製品については、ハイランドパイプス用のシーズニングをご使用頂けます(但し、革バッグのみです。ゴアテックスバッグには使用しないで下さい。)

以下、スコットランドの某バグパイプメーカーが販売しているシーズニング(ハイランドパイパーの間では有名なブランド)を使ったバッグのシーズニング処理です。なお、この処理を
行う際には、汚れても良いような服装をお勧めします。また、作業は、できれば屋外か風呂場、あるいは板張りの部屋で行うことをお勧めします。
じゅうたんや畳の部屋で行うと、栓が外れてシーズニングが飛び散った場合の後始末が大変です。

まず、このシーズニングは常温では固まっているので、これを過熱して液状にします。この製品は、最近はプラスティック容器に入っており、電子レンジで過熱するようになっています(使用説明にもそう書いてあります)。昔は容器が金属の缶で、熱いお湯につけて温めていたので、私はその習慣で、今も湯せんで温めています。温める際、中の空気が熱で膨張するので、キャップを緩めて空気が抜けるようにしておきます。中身が温まってどろどろの液状になったら、割り箸などでこれをよくかき混ぜ、固形部分が残らないようにします。

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シーズニングが温まるまでの間に、バッグからチャンター・ドローン・ブローパイプを外し、ブローパイプストックを除く各ストックに栓をします。ちょうどよい大きさのコルク栓があれば理想的です。無ければキッチンペーパーを硬く丸めて代用できますが、いずれにしても、しっかりと栓がされていることを十分確認してくださいバッグカバーがついている場合は、必ず外しましょう。シーズニングが飛び散るとシミになって、なかなか落ちないからです。

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じょうごをブローパイプに差込み、まだ温かい状態のシーズニングを注ぎいれます。どのくらい注ぐかは、バグパイプの種類やバッグの大きさにより異なります。使用説明によれば、ハイランドパイプスの場合、新しいバッグなら中身の半分、その後のメンテナンスでは四分の一、と書いてあります。この際、どぼどぼと一度に沢山注ぐのではなく、少しずつ注意深く注ぎましょう。一度に大量に注ぐと、ストック内部を通ったシーズニングがバッグ内部にいきわたる前にストックからあふれ出し、バッグ表面を汚してしまうことがあるからです。

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注ぐ際は、出来れば各ストックを上に向けた状態で行うのがよいと思います。ストックの数が多いと一人では難しいので、手伝ってもらえる人がいれば、サポートを頼むとよいでしょう。これは、ブローパイプストックから注ぎ込んだシーズニングが別のストックに流れ込んでしまい、革部分に行き渡る量が少なくなるのを防ぐのと、後でストック内部の掃除をするのを楽にするためです。

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必要な分量のシーズニングを注ぎ終わったら、注ぎ口のブローパイプストックにも栓をします。この際、バッグ内の空気は出来るだけ抜いて、バッグをぺったんこの状態にしておきます

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次に、手でバッグをよく揉み、中に入れたシーズニングが内部に満遍なく行き渡るようにします。

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バッグを手で揉む際には、特に縫い目やストックの付け根にも、十分シーズニングが行き渡るように注意します。

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バッグの内部にシーズニングが十分に行き渡ったら、ブローパイプストックにはめていた栓を外し、そこにブローパイプを差し込んで、空気を吹き込みます。パンパンに膨らんだら、しばらく放置します。バッグをパンパンにすることで、革の内部にシーズニングが滲みこみ、後でこれがゲル化して微細な孔を塞ぐ目止めの役割をします。なお、バッグを膨らませた際、縫い目や毛穴からシーズニングが滲み出してくることがあります。これはある程度までなら許容範囲です。これは随時ふき取りましょう。パンパンにしたバッグも、しばらくするとしぼんでくることもありますが(栓の隙間や差し込んだブローパイプから空気が少しずつ抜けたりもします)、少しずつしぼんでいく程度なら問題ありません。しかし、シーズニングが染み出す量が著しく多く、すぐにバッグの空気が大量に抜けてしまうようなら、バッグそのものに何かしらの問題があることを疑う必要があります(毛穴等に比べ著しく大きな孔や裂け目がある、縫い目が大きすぎる、縫い目がほどけている、ストックがしっかり装着されていない、等)。こうした場合、問題の箇所からシーズニングが勢いよく噴出てくるので、修理すべき部位を特定できます。あるいは、バッグ表面全体からジワっと大量のシーズニングが染み出してきて、すぐにバッグの空気が抜けてしまうのなら、バッグの交換を検討しましょう。

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パンパンにしてしばらく放置してから、ころあいを見計らって、ストックの栓を外します。この頃になると、バッグはある程度しぼんで中の空気圧も低くなっていますが、栓を外す際にはゆっくりと注意深く行います。そうしないと、内部の圧力によってシーズニングが噴出することがあります。ここで、割り箸などに布切れを巻きつけたもので、ストック内部に付着したシーズニングをふき取っておきます。この作業は、シーズニングが完全に固まる前のほうが楽に出来ます。その後、チャンターストック以外のストックに、もう一度キッチンペーパーなどで軽く栓をしておきます。これは、吊り下げて干している間に、中のシーズニングがそこから流れ出し、バッグの表面に滴り落ちて汚してしまうのを防ぐためです。そして、チャンターストックを下に向けてバッグを吊るし、中のシーズニングを流しだします。下に受け皿になるものを置いておくとよいでしょう。流しだしたシーズニングは再利用しません。捨てましょう。

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あとは、数時間バッグをぶら下げておき、もう一度ストック内部の掃除をします。特にチャンターストック内部にはゲル化したシーズニングが多く付着しているので、これを丁寧に拭い取ります。その他のストックの内部も、もう一度確認しましょう。

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なお、今回使用したシーズニングは、ハイランドパイパーの間での定番商品ですが、つい先日、この商品をハイランドパイプスの新品バッグに使用したドイツ人の知人から、「処理後数時間で機密性が損なわれた。品質にむらがあるのかも。他にもそう言っている人がいた。」という話を聞きました。この意見は、一応ご参考までに紹介したのですが、私自身はこの商品を使っていて品質に問題があると感じた経験はありません。また、彼の場合、バッグそのものに何らかの問題があった可能性も否定できません。もちろん、他のメーカーの商品も出ているので、色々なメ種類を試してみるのも良いと思います。

また、シーズニング処理の頻度ですが、これは使用している楽器や使用状況によりまちまちです。基本的には、以前に比べて空気漏れが気になってきた、という場合に行えばいいと思います。ハイランドパイパーの方の中には、定期的に行ったほうがよい、と仰る方もおられます。特にハイランドパイプスはバッグにかかる負担が著しく大きいこともあるのでしょうが、もちろん、転ばぬ先の杖、という意味では、他のパイプスでも定期的に(例えば年一回)行っても構いません。最低限必要か、という意味では、楽器を定期的に使用し、またこれが清潔に保たれている限りでは、実際に機密性の低下が問題になり始めたり、革がごわごわしだしたかなと感じた時に行えばよいと思います。

材料となる革自体が十分気密(毛穴などからの漏れが無い)で耐水性に優れた処理がなされているものなら、縫製時に予め縫い目の目止めをしておくことで、革バッグでもシーズニングフリーにすることが出来ます。実際、私の製作している革バッグの何割かは、シーズニングフリーです。ただ、革は天然由来の材料のため、常にそういう状態のものが手に入るわけではありません(一応、買い付けの際、手触りである程度判断してから仕入れていますが)。当工房のバグパイプでは、必要な場合には、お客様へ出荷する際にこちらで予めシーズニング処理を行っていますので、そのままで演奏に問題がなければ、緊急にシーズニング処理をして頂く必要はありません。但し、演奏した後にバッグから湿った空気を出し、ストック内部についた水分をふき取る等、バッグを清潔に保つお手入れは欠かさないようにしてください。

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2014/11/30/33083 バグパイプ工房 そのだ

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