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2012年10月 7日 (日)

ゴム製ブローパイプバルブの作り方

 先日私のお得意様から、「自分でゴム製のブローパイプバルブを作ってみたい」とのご相談を受けました。本ブログでは、以前皮製バルブの作り方をご紹介しましたが(http://bagpipesonoda.air-nifty.com/blog/2011/05/post-10c5.html)、その後ゴム製バルブを導入してみたところ、何人かのお客様からご好評を頂きましたので、最近はゴムで作ることも多くなりました。

 さて、作り方です。まず、二種類のゴム板を用意します(下写真左)。黒いほうは「CRゴム板」、茶色いほうは「飴ゴム」という商品名で、東急ハンズで安価に手に入ります。厚さはそれぞれ1mmです。

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 最初に、皮を丸くくりぬく「ハトメ抜き」という道具を使って、飴ゴムのほうに型をつけます。ここでは印をつけるためだけで、くりぬきません。皮製バルブの際に書きましたが、この道具は皮革工芸に使われるもので、インターネットでも手に入ります。くりぬく円の直径は、ブローパイプストックの内径から2~3mm程度小さい直径のものがよいでしょう。私はブローパイプストックの内径を大抵18mmで作っていますので、この用途には直径15mm又は16mmのものを使っています。

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 丸く印をつけたところに、小さな尻尾部分をつけてやります。

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 これをハサミで丁寧に切り取ります。ここで、ゴムを引っ張りながら切ると、きれいに切れませんので、注意してください。また、ハサミを何回も細かくチョキチョキと動かして切ると、切断面が段々になってしまいがちなので、ハサミを大きくあけ、一回の「チョキ」でできるだけ長く切るようにします。ここは慎重に行います。

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 次に、黒いゴムをくりぬきます。ここでは、ハトメ抜きで、そのままくりぬきます。

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切り出した飴ゴムと黒ゴムのパーツです。

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 黒ゴムのほうは、カッターで端を少し切ってやります。

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 飴ゴムと黒ゴムを張り合わせます。私は二剤混合の耐水性エポキシ接着剤を使っています。このエポキシ接着剤のパッケージには「ゴムの接着には向かない」と書いてあるのですが、おかしなことに「ゴムも接着できる」と書いてある他の接着剤よりもよく接着できるため、これを使っています。ただ、私自身このエポキシ接着剤に100%満足しているわけではなく、もっといい接着剤があればそれを使いたいのですが、今のところ見つかっていません。もしゴム専用のいい接着剤をご存知の方がおられましたら、ご教示頂ければ幸いです。

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 接着済みのパーツです。

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次に、金属の薄い板を用意します。私は厚さ0.3mmの真鍮板を、幅4ミリほどにカットして使っています。真鍮板も東急ハンズなどで手に入りますし、金属用のハサミがあれば切ることができます。切断面は紙やすりをかけて滑らかにしておきます。切断面をそのままにしておくと、手を切ったりジョイントの巻き糸を切断してしまうので、ご注意下さい。

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  この真鍮板の端5mmくらいを、ペンチを使って折り曲げます。

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 折り曲げた部分の間に飴ゴムパーツの尻尾部分を差込み、ペンチを使ってきっちりはさんで固定します。

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 これで出来上がりです。下の写真の左が裏側、右が表から見たものです。

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 さて、これをブローパイプに取り付けるのですが、取り付け方は皮製バルブと基本的に同じで、金属の部分を糸で巻きつけます。しかし、ゴム製バルブの場合には少しコツが必要です。というのは、取り付ける位置の微妙な違いによって、動作が全然違ってくるからです。この点については、何ヶ月か前に、当工房のお客様にご覧頂けるよう、ビデオをYouTubeにアップしてありますので、こちらをご覧下さい。http://www.youtube.com/watch?v=sD-KsbAzaLE

 ところで、口吹き式バグパイプのブローパイプには、上述のように飴ゴムと黒ゴムを貼り合わせたものを使っていますが、最初は次の写真のように飴ゴムだけの一層構造のバルブを使っていました。

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 飴ゴムだけでもきちっと空気の逆流を止められますし、むしろ取り付けは飴ゴム一層タイプのほうが簡単なのですが、長時間演奏し続けたり、演奏後ブローパイプをストックに差し込んだままにして長時間湿気にさらすと、バルブが反ってしまうということが分かりました。このため、湿気による反りを減殺するために二層にしました。ちなみに、一層タイプの「反り」が判明したのは、昨年のバグパイプ製作コースでのこと。製作コースではヒュンメルヒェンとボックを作って頂くのですが、ヒュンメルヒェンのほうが作業量が少なく、ボック組より早く完成するため、ヒュンメルヒェン組はさっさと製作を終わらせ、山羊の毛だらけになっているボック組を横目に、完成した楽器で遊んでいるわけです。で、ヒュンメルヒェン組の中に、極めて練習熱心な少年がいまして、彼は作ったばかりのヒュンメルヘンを片時も手放さず、何時間もぶっ続けで練習に励んでおりました。そこでこの「反り」が発生し、問題点が明らかになったという次第です。この少年、全くのバグパイプ初心者だったのですが、コースが終わる頃には何曲かのレパートリーを演奏できるようになって帰って行きました。やはり練習は大切ですね。

 この飴ゴム一層タイプは、湿気にさらされなければ問題ありませんし、取り付けも容易ですから、ふいご式のブローパイプ(ふいごとバッグの接続管)には、今もこれを使っています。

 反りの問題さえなければ、一層で十分対応できるので、反らない素材があれば使ってみたいと思っています。厚さ1mmほどのシリコン板が手に入れば、使ってみたいのですが、なかなか見つからず現在に至っています。この点についても、もしいい素材があるようでしたら、ご連絡頂ければ幸いです。

<今日の一本>

 今回はお客様の演奏をご紹介いたします。神戸在住の「てりー@LDMT」さんが、ご自身が関わっておられる音楽プロジェクトに、当工房のヒュンメルヒェンを使って下さっています。「東方永夜抄-風神録 Floating Cloud - 夏果の郷」という曲で、YouTubeで聴くことができます。http://www.youtube.com/watch?v=qp-0RONUm-Y

 このプロジェクトの公式サイトはこちらですので、合わせてご覧下さい。「てりー@LDMT」さんのほか、某有名パイパーの方も参加されています。→http://floatingcloud.net/disc/toho_irish/

 また、「Tranica」というサークルの自主制作盤での「とある祈り」という曲で、部分的ですがヒュンメルヒェンを二胡とのユニゾンで使用してくださったとのこと。サイトのリンク(こちら→http://tranica.net/)から演奏をお聴き頂けます。

 「てりー@LDMT」さんはもともとアコーディオンを演奏されていたとのことで、バグパイプは初めてだったそうですが、バグパイプの演奏技術を習得し、なお且つご自身のオリジナルに用いるという離れ業を、極めて短期間で実現された方です。特に「東方~」の演奏は、楽器入手後わずか数ヶ月だったとのこと。

 お客様が当工房のバグパイプを使ってご活躍され、バグパイプの新境地を切り開いておられることを知るのは、製作者として何より嬉しいことです。

  <現在取り組んでいるバグパイプ>

 前回完成間近だったブラックウッド製ふいご式A管スコティッシュ・スモールパイプスが完成し、お客様にお送りしました。これです。(変なバグパイプばっかり作っているようですが、普通のパイプスも作ってます。)

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 既存製品以外で、開発を請け負っているプロジェクトは以下の通りです。(毎度ながら、納期遅れてすみません・・・。)

  • ヒュンメルヒェンC管及びアルトF管・キー付きチャンター(ほぼ完成)
  • オープン運指のスコットランド音階プラクティスチャンター(完成)
  • ドゥダィD管キー付きチャンター(キーのポジション確定作業中)
  • オープン運指のC管ドゥダイ
  • A-minor仕様のガイタチャンター
  • ダブルチャンターヒュンメルヒェンD管
  • (ついに!)ボーダーパイプス

 成果は今後の記事でご紹介していきたいと思います。

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2012/09/09/17518

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