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2012年8月12日 (日)

(日本人のための?)シェーファープファイフェ 新発売

 既にホームページには掲載しているので、ご覧頂いた方もおられるかもしれませんが、最近「シェーファープファイフェ (Schäferpfeife)」というバグパイプを新発売しましたので、お知らせします(以下、写真と音源サンプル)。

Cimg3940

音源サンプル:http://www.youtube.com/watch?v=3b6R7mzyMQA

 シェーファープファイフェは、ヒュンメルヒェンと並び、最も普及しているドイツのバグパイプです。シェーファープファイフェとは、直訳すれば「羊飼いのパイプ」という意味です。人気のあるバグパイプなので、ドイツのバグパイプ職人さんのほとんどの方が作っておられ、競争が厳しい分野であること、また、チャンターのテーパー比にあわせた工具も必要にな等の理由で、当工房ではこれまで製作していませんでした。今回、この楽器を作るきっかけを下さったのが、ある日本のお客様でした。そのお客様いわく、「自分は手が小さく、長いチャンターのシェーファープファイフェの演奏は大変そうなので、小さな手でも楽に演奏できるチャンター設計でシェーファープファイフェを作れないか」ということでした。

 実は私もシェーファープファイフェを持っておりますが(これは他の職人さんのものです)、私も手が小さく指が短いため、同じ悩みをかかえておりました。特に、今日一般的なシェーファープファイフェでは、半音を出すためにチャンターの裏側、位置的には人差し指と中指の間ほどに、右手親指の音孔があけてあるのですが、これを押さえながら右手小指を閉じたりあけたりするのにいささか不便を感じておりました。このため、このお客様の気持ちはよく理解できましたので、あまり経験のない分野ではありましたが、それを機会に開発に着手しました。昨年春のことです。

 とはいってもなかなか簡単には進まず、通常の仕事の合間に色々と失敗しながら試行錯誤を続け、お客様に1年以上もお待ち頂いてようやく今年6月に納品した次第です。ご注文下さったお客様に対しては、よい機会を与えてくださったこと、それに長い間文句も言わず忍耐強くお待ち頂いたことに、大変感謝しております。

 以下の写真が、当工房の試作品チャンター(左)と、一般的に普及している設計のチャンター(右)との比較です。

Cimg4450

 当工房の設計で変えた点は次の通りです。

  • 全体的にやや短めで、右手薬指と小指の間の隔たりを少なくしています。
  • 一般的なシェーファープファイフェでは、上記の写真右側のチャンターのように、右手小指の音孔はリコーダーのように外側にずれていることが多いのですが、当工房ではハイランドパイプスのチャンターのように、上の音孔と一直線上に配置することにしました。これは、チャンター裏側の右手親指の音孔を押さえやすくするため、特に右手の人差し指・中指・薬指の音孔はハイランドパイプスのように指の中ほどで押さえると良い、という私の知人(シェーファープファイフェの指導をしている)のアドバイスを思い出し、それに対応したものです。そうやって演奏しようとすれば、小指の音孔が外側にあるよりも一直線に並んでいるほうが押さえやすいからです。

 また、写真では分かりませんが、従来とは異なる音孔配置を可能にするため、内部構造も少し変えてあります。

 シェーファープファイフェは大変人気のある楽器であるだけに、色々な職人さんによって研究され尽くされ、現在は設計も一つの形にほぼ収束・固定化しつつある、という話を聞いたことがあります。リードの互換性などを考えれば標準化のメリットは大きいですが、お客様一人一人に合った楽器を作る、という点からは、あえてスタンダードと違う設計を試してみることにも意義があるのではないか、と思います。

 上述のごとく、今回の当工房の設計では、手の小さな方の利便性を考慮しているので、欧米人に比べると体格の小さな日本人、あるいは女性の方にとって、シェーファープファイフェがより親しみやすい楽器となるきっかけになればと思います。

 次回は、シェーファープファイフェという楽器のプロフィールについて、ご紹介したいと思います。現代型のシェーファープファイフェとプレトリウスのシェーファープファイフェとの相違点、演奏の楽しみ方などについて書く予定です。

<今日の一枚>

 今回から、記事内容とは関係なく、バグパイプに関係した写真(ビデオ)などを一つずつご紹介していきたいと思います。今回はこれ。なんの写真か分かりますか?

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 これは、ボックでチャンター・ドローンとその先の角を連結している部分の金具(下写真参照)の製作途中の状態です。Bockgelenk

 このように真鍮管を斜め切りにし、バーナーでL字型にくっつけ、表面を磨きます。一見なんてことない部品なのですが、作るのはかなり手間のかかる作業です(まだ職人になる前に、この部分を金属屋さんに作ってもらったことがありましたが、一万円位したので、外注は断念して自作することにしました)。

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