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2011年10月 3日 (月)

小型中世バグパイプ(ヒュンメルヒェン)の機能追加について

 随分前に、私の小型中世バグパイプ(中世風デザインのC管ヒュンメルヒェン)を取り扱って下さっている「世界楽器てみる屋」さんから、この楽器のドローンをCとDで切り替えられるようにしてはどうか、というご提案を頂きました。実はヨーロッパのお客様数名からも同様のご要望があって、長らく私の課題になっていました。日々の雑事に追われてのびのびになっていましたが、この度ようやく製品に反映させることができましたので、ご案内いたします。

 「C管バグパイプにDのドローン?」という疑問をもたれる方もおられるかと思いますが、実は当工房の小型中世バグパイプを含め、現在ドイツ語圏で作られているC管ヒュンメルヒェンの殆どは、音域的にD-minorの曲にも適しているのです。多くのバグパイプ(ハイランドパイプス、ガイタ、セックピーパ、コルナミューズ等)では、ボトムの主音を出すためには(右利きの方の場合)右手小指を上げます。一方ドイツ式C管ヒュンメルヒェンでは、運指や音孔配列がソプラノリコーダー様になっていて、指を全部閉じた状態の最低音が主音になる構造です。すなわち、C管ヒュンメルヒェンで右手小指を上げるとD音が出て、音域も普通のバグパイプの感覚で言うとD管に相当するわけです。但し、もともとC-Majorの音孔配列ですからFがナチュラルなので、「小指を上げて主音」のバグパイプの感じで演奏するとD-minorの音階となるわけです。

 C/Dの切り替えをするためには、スライドの可動部分を長くする、ドローンの上半分を取り替える、リードを取り替える、といった方法もありますが、できるだけ手軽な方法にしたかったので、ドローンの最上部のパーツを回転式にして、D用にあけた孔を開閉する方式を採用しました(写真)。YouTubeにもビデオをアップしましたので、ご興味のある方はご覧下さい。

http://www.youtube.com/watch?v=xZkyBnNt5Xw

J0033takahashi1 J0033takahashi2

 但し、ビデオでも触れましたが、厳密に言うと一点どうしても避けられない問題があります。すなわち、音域的にはD-minorも可能とはいえ、もともとC管として製作・調整したチャンターをDのドローンと一緒に演奏すると、理論上はチャンターのいくつかの音(特にA音など)がドローンのD音と完全にピュアなハーモニーを作ることができず、やや唸りを生じることになります。これは音律を支配する自然法則によるためどうしようもないというのが一つ、もう一つは、バグパイプは意図した調でのドローン+チャンターの調和を重視するため、「純正調律」と呼ばれる調律法に基づいて製作・チューニングするのが一般的ですが、純正調律は移調に適しておらず、移調時の和音の濁りが目立つためです(この点については、近いうちに回をあらためて書きたいと思います)。

 とはいえ、この点をこちらのプロ奏者の方に相談しても、実にあっさり「うーん、それは妥協するしかないね」という答えが返ってきましたし、実際にも皆さん全く気にしないで移調していますので、よほどの場合を除き、その点はおおらかに考えてもよいかと思います。どうしても気になる場合には、移調の際にはチャンターのチューニングを調整しなおすか、中・上級の奏者なら吹き込みの強さを適宜調節して唸りを減らすことも可能でしょう。

 今回のドローン切り替えはいわばマイナーチェンジですが、ヒュンメルヒェンについては既存品とは異なる音域の特注品のご注文を二つばかり頂いており、これらも鋭意製作中です(御注文下さったお客様、お待たせしており申し訳ございません…)。完成時にはブログでご紹介させて頂きます。お客様の側から色々ご提案頂くというのは、ご自身がバグパイプの使い方を自分なりにイメージされている証であり、作る側としても勉強になりますし、また楽しいことでもあります。

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2011/10/03/7881

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