A=415Hz/440Hz対応のヒュンメルヒェンを作りました
今年の7月、以前このブログでもご紹介させて頂いたオーストリアのバグパイプ演奏家Sepp Pochlerさんとお会いする機会がありました。ミュンヘン西部にあるニンフェンブルグ宮の前のカフェで、色々とバグパイプ談義をしたのですが、その時彼が言っていた「バグパイプの多くは古楽器としての側面も持っている。バグパイプはもっと古楽シーンで使われてもいい楽器だと思う。」という言葉が、今も印象に残っています。
実はそれに先立って、日本のあるお客様から、A=440Hz/415Hz双方に対応した小型中世バグパイプ(中世風デザインのヒュンメルヒェン)の御注文を頂いておりました。その楽器(下写真)が、この度ようやく完成しましたので、新製品としてご紹介いたします。説明と演奏の動画もYouTubeにアップしました。http://www.youtube.com/watch?v=TffgeznDaqU
(A=415Hzって何?という方へ:現代の音楽では、一般的にA(ラ)の音が440Hz前後に設定されています。ところが、バロック時代以前の音楽では、それより半音から、時には一音くらい低いピッチで演奏されていた、とされます。現代のピッチA=440Hzよりも半音低いのが、A=415Hzです。30年ほど前までは、バッハやビバルディの音楽も、現代と同じくA=440Hzで演奏されるのが一般的でしたが、近年はこうした古い時代の音楽をA=415Hzで演奏する奏者・グループも増えています。もちろん、バロック時代以前のバグパイプがすべてA=415Hzで標準化されていたとは到底考えられませんが、古楽の演奏で現在よく使われるピッチがA=415Hzなので、今回の製品はそれに対応したものです。ちなみに、ハイランドパイプスの世界でAといっている音は、他の殆どの楽器が基準としているA=440Hzの尺度で言えば、Bbよりも高い音になります。このため、ハイランドパイプスと他の楽器を、楽譜をそのまま共有して合奏すると、かなり前衛的な?演奏になります。)
動画で殆ど説明いたしましたので、繰り返しになりますが、チャンターだけは440Hz用と415Hz用にそれぞれ必要ですが、ドローンは一台でどちらのピッチにも対応しています。チャンターリードは440Hzと415Hzで共用です。また、今回の楽器ではドローンの音も色々と切り替えられるようにしました(先日ご紹介したC/D切り替えドローンの延長です)。次のような組み合わせになります(いずれの音も440Hzと415Hzの両方で演奏可)。
バス:C/D
バリトン:F/G/A
テナー:C/D/E
もちろん、前回の記事で触れたように、ドローンとチャンターのハーモニーで一部妥協が必要にはなりますが、和音の色々な可能性を楽しんで頂けるようになりました。これら可変ドローンは、今後通常のA=440Hzモデルにもオプション機能として適用していきます。下記写真のように、ドローンのトップパーツに空けた孔を使います。
実はA=415Hzのヒュンメルヒェンは、ずっと作りたいと思っていたのですが、なんだかんだで後回しになっておりましたところ、今回の御注文でめでたく実現いたしました。御注文主の方(ルネサンスリュートを演奏されるそうです)には、良いきっかけを下さったことを感謝したいと思います。
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2011/10/13/8084
バグパイプ工房 そのだ
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