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2010年10月 5日 (火)

淀川・鵜殿のヨシでバグパイプのリードを作成

 大阪府高槻市の淀川沿いに、鵜殿という地区があります。ここに育つ「ヨシ」と呼ばれる葦の一種は、篳篥(ひちりき)の蘆舌(ろぜつ)と呼ばれるリードの最高素材として、雅楽の世界では古くから重宝されているそうです。

 楽器に利用できる素材があれば何でも利用してみたいし、それが日本の伝統素材なら尚更。ということで、鵜殿のヨシをバグパイプのリードに使えないかと短絡的に考え、2009年の1月、鵜殿の保全活動をしておられるK先生と淀川河川レンジャーのTさん、それに「鵜殿クラブ」の皆様をお訪ねし、皆さん行き着けの居酒屋で色々とお話を伺いました。翌日にはK先生のご指導でヨシ刈りの体験もさせて頂いた上、篳篥の蘆舌を作っていらっしゃるO先生をご紹介頂き、後日O先生から乾燥済みのヨシを分けて頂きました(写真)。

Udono_1

 私は普段はArundo Donaxと呼ばれる、主に地中海地方やカリフォルニア産の葦(バグパイプ奏者が一般に「ケーン」と呼んでいるのはこれです)を使ってリードを作っています。ヨシはArundo Donaxに比べると直径が小さく、肉も薄いため、まずはシングルリードの舌の部分に使ってみようと考えました。下の写真はヨシを幅5mm程度の縦割りにしたものです。ここからナイフと紙やすりを使って、平らな薄い切片に加工します。

Udono_2

 実際に計測したわけではないのですが、ヨシはArundo Donaxに比べると軽い質感で、密度も薄いような印象を受けます。しかし、これをArundo Donaxの場合と同じ厚さに加工して鳴らすと、音はむしろ硬質になり、ドゥディなどシングルリードバグパイプのチャンターリードにするには制御が難しそうだ、というのが第一印象でした。

 そこで一旦挫折してしまい、仕事が忙しくなったこともあって、1年近く開発を中断していました。そこへ、たまたま口吹き式ドゥディを持っている人が訪ねてきて、その楽器に合う葦のチャンターリードを作って欲しい、との依頼を頂きました。もともと彼の楽器についていたリードは、プラスティックチューブにカーボン製の舌を備えたものだったのですが、このほかに葦のリードが欲しくて色々と試したがうまくいかず、相談に来られたそうです。そこで、最初はフランス産のArundo Donaxを使ってみたのですが、彼の楽器の「個性」に合うようなリードが出来ず、半ば苦し紛れに鵜殿のヨシを試したところ、これが奏功しました。もともとのカーボンの舌がかなり薄いのに注目し、ヨシも極めて薄い切片にして利用したところ、オリジナルのリードと同じような「しなり」が得られたようです。

 この経験に基づいて、今度はプレトリウス・ドゥダイのチャンター・リードを作ってみたところ、これも軽やかな音がでるように仕上がりました。(写真下)

Udono_3

このプレトリウス・ドゥダイは、チェコ・ストラコニツェの国際バグパイプフェスティバルで展示し、知合いのバグパイプ奏者数名に試奏して頂いたところ、大変好評を頂きました。そのときの映像はこちらでご覧頂けます(http://www.youtube.com/watch?v=dVuBjuzguZU)。このビデオを撮影した際にはチューニングをしないでお渡ししてしまったため、ちょっと音程が気になる部分もありますが、音色はお分かりいただけるかと思います。

 鵜殿のヨシにもリード素材としての可能性が見えてきたので、日本発の素材としてこれからも色々と試してみたいと考えています。

(本ブログでは、現在コメント欄は設けておりません。お手数をおかけして恐縮ですが、本内容に関するお問い合わせはbagpipesonoda@mbr.nifty.comまでお願いいたします。)

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